研究委員会企画シンポジウム
スポーツ実践の社会学的記述(仮)
日時:2026年3月14日(土)15:00~17:30(予定)
場所:日本女子大学(教室未定)
本学会第33回大会(2023年:日本大学)では、「『する』スポーツ再考:『語って』ばかりのスポーツ研究から脱するために」と題して実行委員会シンポジウムが実施された。そこでは、「スポーツ社会学者は、「みる」スポーツについて「語って」ばかりなわけである」と指摘されていた。本シンポジウムはこの問題意識を共有しつつも、別の角度からアプローチしてみたい。
そこで、以下のような問いを立ててみる。すなわち、スポーツ社会学(者)は、スポーツ「から」語っているだけで、スポーツ「そのもの」を語ってこなかったのではないか。2025年に刊行されたスポーツ社会学事典のなかで岡田光弘は、「スポーツ社会学はスポーツを「知る」ことに貢献し「支える」人々、「観る」人々を研究してきたがスポーツを「実践する」姿を研究対象とすることはなかった。実は社会学一般において研究対象として「相互行為という核心部が抜け落ちている」のである」(岡田 2025:606)と指摘している。ここで主張されているのは、スポーツ実践における相互行為を研究していくという路線である。本シンポジウムではこれを議論したい。
そもそもスポーツ社会学者に限らず、スポーツに関わるとき、私たちは何をしているのだろうか? 一般的にスポーツとの関わり方には、「する」「みる」「支える」という3領域(注)があると言われるが、私たちはどのようにスポーツを行い、観て、支える活動に従事してきたのだろうか。そうした活動に従事する際に、参与者たちは、スポーツの中でどのような「社会」を作り上げているのだろうか。そうした社会で活動したり、それを組織化するために、どのような当事者たちの実践的課題があるのだろうか。
この視点からは、スポーツ「と」社会的課題というテーマではなく、スポーツにおいて生起する当事者たちの実践的課題を明らかにしていくような研究方針が求められる。こうした問いは、実は、どのような形であれ私たちがスポーツに関わる際に、直面する課題である。たとえば、ゲレンデで滑りだそうとするとき、私達は周りにいるスキーヤーやスノーボーダーを観察しつつ、他の人の滑り出しを邪魔しないタイミングを伺い、滑り出すことで、「スキー」「スノーボード」の実践が達成される。あるいは、子どものスポーツを応援するとき、誰かの応援だからといって、いつでもどこでも声をかけていいわけではなく、応援には適切なタイミングと内容がある。スポーツ実践には、それに参与する当事者にとっての課題があり、わたしたちはそれを何らかの方法を持って解決し、実践を行っている。すなわちそこには、実践が課題として解決して成立させている何らかの(社会)秩序がある。それを研究することは、スポーツのなかにある「社会」を記述・研究することであるだろう。
ここで企画者が想定しているのは、主としていわゆるエスノメソドロジー&会話分析(EMCA)と呼ばれる研究潮流である。 本シンポジウムでは、こうした観点から、スポーツを「する」=当事者として自身がスポーツ参与する、スポーツを「みる」=スタジアムやテレビでスポーツを観戦する、スポーツを「支える」=体育教師やコーチとして指導する、といった領域において、当事者たちの実践から問いを受け取る研究を展開している登壇者をお呼びし議論していくことで、スポーツ社会学の研究実践を考えてみたい。
(注)2025年のスポーツ基本法改定で示された「集まる」「つながる」についてはここではひとまず検討外とするが、どうやってスポーツで集まり、つながるのか、という問いを立てることができる。
●登壇者
・スポーツをする:桑畑洋一郎氏(山口大学)
主な関連論文
・ 桑畑洋一郎,2025,空間を共有する技法――スケートスポットにおけるスケートボーダーの日常的実践,異文化研究19:35-52.
・ 桑畑洋一郎,2024,スケートボードの楽しみの文法 : 「Game of Skate」あるいは「Skate Game」を素材に,異文化研究18:25-38.
・スポーツをみる:酒井信一郎氏(立教大学)
主な関連論文
・ 酒井信一郎,2024,メディアディスコースとしてのスポーツリプレイ――H・コリンズによる「ユビキタスな専門知」を再考する,メディア研究105:73-90.
・ 酒井信一郎,2016,観光における「見ること」の組織化,酒井泰斗ほか編『概念分析の社会学2――実践の社会的論理』ナカニシヤ出版.
・スポーツを支える:五十嵐素子氏(北海学園大学)
主な関連論文・文献
・ 五十嵐素子ほか編,2023,『学びをみとる――エスノメソドロジー・会話分析による授業の分析』新曜社.
・ 五十嵐素子,2016,「「教示」と結びついた「学習の達成」――行為の基準の視点から」,酒井泰斗ほか編『概念分析の社会学2――実践の社会的論理』ナカニシヤ出版.
●指定討論者
中澤篤史氏(早稲田大学)・岡田光弘氏(成城大学)
●司会
渡 正(順天堂大学)・海老田大五郎氏(新潟青陵大学)
