学生企画シンポジウム

スポーツ社会学者は何をしてきたのか
―「あなた」の語りから―

日時:2026年3月14日(土)9:00~11:00(予定)

場所:日本女子大学(教室未定)

本シンポジウムは、4名のスポーツ社会学者へのインタビュー調査を通じ、それぞれの研究者が見てきたものや現在考えていることから、「スポーツ社会学という学問とはいかなる営みなのか」について改めて考え、議論することを目的とする。
本学会の営みについては、伊藤ら(2002)によってすでに俯瞰した学会設立全体の流れを対談形式で聞き取り、整理されている。しかし、スポーツ社会学はそれだけではなく、個人の多様な営みによって成立していると言えるだろう。たとえば杉本(1992)は、本学会の会報第1号において、「第1回のスポーツ社会学の一般発表では、何をスポーツ社会学の射程とするかを模索するという段階にあり、そのテーマが多様化することは避けることができない」(杉本,1992,p.12)と述べている。
このように本学会創設時から現在において「スポーツ社会学とはいかなる営みなのか」という問いにまつわる状況は大きく変化し、多くの研究者の手によって多様な研究が積み重ねられ、さまざまな成果がもたらされてきた。また、本学会初代会長の井上(1993)は、日本のスポーツ社会学において日本の伝統的なスポーツを分析した時、輸入理論としての社会学理論がどの程度有効なのか、または有効でなければそれを更新できる可能性も持ち合わせているという意味において、社会学そのものの発展にも貢献できるのではないかと述べている(井上,1993,p.38)。
このように、さまざまな社会学的な問いが存在する中でも、当時から多様な研究が展開されてきており、さらにはスポーツ社会学という営みがいかなるものかという展望も提示されていた。しかし、一方で現代においては、菊(2023)が指摘するように、体育・スポーツ・健康への社会学的な「問い」が設定される背景において、利害状況との関係や、メタ認知的な「問い」の不足から、「当たり障りのないもの」(菊,2023,p.23)へとなりがちな状況もみられ、私たちは再び、スポーツ社会学という領域において、何を目指して学問していくのかについて改めて考える時期にあるのではないだろうか。
企画者である世話人(大学院生)も、自身の研究活動を進める中で、私たちは研究を通して何をしているのだろうかという漠然とした疑問や、「スポーツ社会学とはいかなる営みであるのか」という問いを常に抱えている現状がある。そこで、本企画ではこれまで長きにわたってスポーツ社会学の分野で活動してこられた研究者一人ひとりの営みにフォーカスし、学会全体の動向の整理だけでは捉えきれないような個人の経験や考えに近接することを通して、その疑問や問いに対しての示唆を得たいと考えている。
具体的には、スポーツ社会学を引っ張ってこられた先生方に「スポーツ社会学者である『あなた』は何をしてきたのか」というインタビューすることを通して、一人称でのライフヒストリーやそれぞれの研究への考えた方などを語ってもらい、多様な形で展開されるスポーツ社会学という学問領域における研究者(ここでは主に大学院生)それぞれが自分なりの考えを深める機会の創出を目的としたい。
本シンポジウムは、三部構成で進行することを予定している。第一部では、本シンポジウムに先立って実施したインタビュー結果を世話人から報告する。具体的には、井上俊先生、菊幸一先生、坂上康博先生、杉本厚夫先生(順不同)への事前インタビューの結果をもとに、それぞれの視点から語られた経験や考えについて整理し紹介する。第二部では、スポーツ社会学領域で活動されている先生(調整中)をお招きし、世話人との対話形式で、第一部での内容や実際に現場で感じていらっしゃる内容を踏まえて議論やレクチャーをいただく。第三部では、第一部と第二部の議論を踏まえ、フロアからの質疑を含めた全体討議を実施する。

登壇者:(調整中)
話題提供者:藤杏子( 学生フォーラム世話人;立教大学大学院)
八木一弥( 同上;立教大学大学院)
船木豪太( 同上;早稲田大学大学院)
小杉亮太( 同上;一橋大学大学院)

井上俊(1993)スポーツ社会学の可能性.スポーツ社会学研究,1:35-39.
菊幸一(2023)社会学からみた体育・スポーツ・健康への「問い」.筑波大学体育系紀要,46:15-25.
杉本厚夫(1992)スポーツ社会学の多様な射程.日本スポーツ社会学会だより,p.12.
日本スポーツ社会学会25周年記念誌編集委員会(2016) 日本スポーツ社会学会25周年のあゆみ,尼崎印刷