学会長挨拶 菊幸一(筑波大学)

学会大会30周年を迎えるにあたって ―新型コロナ禍での記念大会―

 日本スポーツ社会学会が1991年に設立され、翌92年に奈良女子大学で第1回学会大会が開催されてから早30年の節目を迎えることとなりました。人間の成長でいえば、まさにこれから「三十にして立つ」(孟子の「論語」)の諺通り、学問で自立する年齢となったわけです。私事ではありますが、私個人の歩みとしても、第1回大会時には奈良女子大学に在籍しており、実行委員長であった江刺正吾先生のもとで、それこそ五里霧中の状態ながら記念すべき学会大会の第一歩を刻んでいったことが思い出されます。その後の学会の歩みについては、2016年10月に学会創立25周年を記念して発刊された『日本スポーツ社会学会25年の歩み』(書肆クラルテ発行)に詳しいのでそれに譲りたいと思いますが、その中で初代会長であった井上俊先生は、概ね、次のような学会に対する期待を述べておられます。曰く、社会学という学問の性格は、社会がこの学問にどのような期待をするのかによって左右される傾向にあるが、現時点では現実的な社会問題の解決策に役立つ、いわば「工学モデル」が期待されている。しかし、長い目で見れば、やはりその問題の立て方自体、認識の在り方自体を問題にする「啓発モデル」が重要であることには変わりがなく、社会学はその両側面を備えた懐の深い学問として発展し、生き延びていくのではないのか、と。
 これは、蓋し、スポーツ社会学の在り方にも当てはまることと思われます。今からちょうど10年前の20周年記念大会(成蹊大学)では(この記念大会も、奇しくも東日本大震災によって開催時期が延期されましたが)、基調シンポジウムのテーマとして「スポーツ社会学の解体―『スポーツ社会学』の社会学―」が掲げられました。新型コロナ禍で学会大会の開催さえ危ぶまれ、実際に対面の学会大会が開催できない状況の中で、スポーツ社会学の存在意義やその在り方をどのように考えていけばよいのでしょうか。このような宿題(課題)は、「三十にして立つ」ことをめざすこの学会にとって、学会会員一人ひとりがその学的営みの根底にすえて考える必要があるように思われます。
 また、今回の30周年記念大会に寄せて、国際スポーツ社会学会(ISSA)会長のマイケル・サム(Michael Sam)氏と北米スポーツ社会学会(NASSS)前会長のジェフリー・モンテス・デ・オカ(Jeffrey Montez de Oca)氏から心温まるお祝いのメッセージをいただきました。サム会長は、日本スポーツ社会学会がこれまでも、またこれからももっとも重要なパートナー学会の1つであり、ISSA 50周年に向けてこの関係がさらに発展していくことへの期待を述べておられます。また、モンテス・デ・オカ前会長は、新型コロナ禍がもたらしたオンライン学会による環太平洋を中心とした学会連携への期待を述べておられます。お隣の韓国スポーツ社会学会も昨年8月に30周年を迎えたことでもあり、このような国際連携の在り方を本格的に模索する時期に来ているように思います。
 最後に、新型コロナ禍における記念大会は、秋田大学での29回大会に引き続きオンライン開催とせざるを得なくなりました。本来であれば、京都産業大学でのオンサイト開催によってこの30回の節目を会員の皆さんと共に祝いたかったわけですが、残念ながらそのような状況には至りませんでした。この間、京都産業大学の実行委員会と学会事務局がタッグを組み、また関西方面の理事を中心にこのオンライン大会の準備がなされたことに、学会会長として深く感謝申し上げる次第です。