第30回記念大会特別講演

「スポーツ史と私」
講演者:高嶋航(京都大学)

講演要旨:
 私のスポーツ史の経験と秘訣を語ってほしいと思わぬ依頼を受けた。まだスポーツ史研究を始めて15年ほどで、自分の研究を振り返ることもなかったが、折角の機会なのでこれまでの歩みとこれからの抱負、さらにできれば社会学との関わりについても考えてみたい。
 私は東洋史学を専攻し、近代中国の社会史を研究してきたが、ふとしたことからスポーツ史に足を踏み入れることになった。研究者はみな、自分の置かれた環境のなかで、自らの長所と短所を見極め、それに応じてテーマや研究方法を選択していくと思う。長所とか短所とかいっても、それは相対的なものである。(とくに日本の)スポーツ史研究では中国が関心の対象となることが少なかったので、中国のことがわかるとか、日本を外から見ることができるというのは私の長所だろう。そこから帝国日本や東アジアという私のスポーツ史研究の戦略が出てきた。資料の世界に耽溺するのが大好きな反面、理論や抽象化は苦手である。これは社会学とは対照的で(もちろん、社会学にもいろいろあるあろうが)、だからこそ社会学の方が私の研究に関心を持ったのかもしれない。
 舞台裏の話は講演に譲るとして、私がこれまで心掛けてきたのは、東洋史の世界でスポーツ研究の重要性を訴えることと、スポーツ史の世界で東アジアの重要性を訴えることだった。前者はあまり成功していないが、後者は少しずつ手応えを感じつつある。ただ、考えてみれば、この二つの目標は、歴史学の世界に閉じこもったものである。今回スポーツ社会学会で発表させていただいたことを機会に、歴史学以外のディシプリンとの対話や交流にも積極的に取り組んでいきたい。

趣旨:
 創立30周年を迎える日本スポーツ社会学会にとって、あるいは社会学という学問自体にとって、独自の研究領域と方法を確立することは、その歴史上、常に課題となってきた。その際、特に問題となるのは、他の専門分野との「距離」をどう設定するかであろう。歴史学や経済学、言語学や心理学といった専門分野とは、方法論を借用することもあれば、社会学的な視点や力点を強調して差異化に努めることもあった。その差異化の試みを、単に自己の正当化にとどまらせず、創造性豊かな視野の獲得につなげることが(スポーツ)社会学の発展に重要なのは言うまでもない。
 そういった狙いから、第30回大会を記念する特別企画として、歴史学の分野から高嶋航先生(京都大学)をお招きし、ご講演をお願いした。高嶋先生は、これまで近現代の「日本」のスポーツ史で目覚ましい成果をあげて来られた。ここで「日本」とカッコに入れたのは、ご研究の焦点が二つの世界大戦の間、「大日本帝国」が急速に領土を拡大して、「日本」概念の拡張を迫られた時期に当てられてきたからである。国内の資料だけではなく、周辺地域の資料から見えるものを取り込まれた点で、先生のご研究は独自の視野と価値を確保されているが、そこから我々が学べることは少なくないものと期待している。
 なお、今回のご講演は、大会初日(2月27日(土))15時30分から3月14日(日)まで録画を配信するかたちで行われる。ご講演に対して質問やコメントのある方は、本ページに質問フォームが設置されるので、大会2日目(28日(日))17時までにメッセージを送っていただきたい。高嶋先生からの回答は、3月10日(水)より大会サイトの同ページで公開し、大会期間の終了(4月7日(水))まで掲載される。

録画配信期間  2月27日(土)15:30 ~ 3月14日(日)23:59
質問受付期間  2月27日(土)15:30 ~ 2月28日(日)17:00
回答閲覧期間  3月10日(水) 9:00 ~ 4月 7日(水)23:59

高嶋先生の最新の著作は以下をご参照ください。
『帝国日本と越境するアスリート』(編著、塙書房、2020年)
http://rr2.hanawashobo.co.jp/products/978-4-8273-1316-1

『国家とスポーツ-岡部平太と満州の夢-』(単著、角川書店、2020年)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321902000164/