研究委員会企画シンポジウム

2022年3月20日実施のライブ録画は、参加登録をされた方に配布のパスワードでご視聴頂けます。

➡【録画配信の視聴】(期間:3月21日(月)~4月4日(月)11:59)

「オリンピック・パラリンピックをめぐる「理念」と「現実」の間で」

日 時:2022 年 3 月 20 日(日)13:30~16:00

東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、「東京2020大会」)は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、近代オリンピック史上初となる1年の延期を経て開催された。大会後に実施された各種世論調査では東京2020大会を開催したことに対して肯定的に評価する人が多数派を占めたものの、大会の延期は結果的にオリンピック・パラリンピックのあり方を問い直す機会となった。すなわち、メディアなどを通じて国際オリンピック委員会(IOC)や東京2020大会組織委員会の体質、放映権ビジネスに代表される商業(主義)化された大会運営、オリンピックと政治との関係性などに対する批判が広く展開され、一部の専門家だけでなく多くの人々を巻き込む形でオリンピック・パラリンピックをめぐる諸問題が議論されることとなった。

こうして多くの問題を抱え、批判にさらされながらも、オリンピック・パラリンピックはなぜここまで生きながらえてきたのだろうか。それは、オリンピック・パラリンピックが様々な「理念」を掲げて開催される希有なスポーツイベントだからであろう。たとえばIOCはオリンピック憲章の中で、オリンピズムの目的を「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進」と定めるとともに、IOCの使命と役割のひとつとして「オリンピック・ムーブメントに影響を及ぼす、いかなる形態の差別にも反対し、行動する」ことを謳っている。同様に、国際パラリンピック委員会(IPC)は、「パラスポーツを通じたインクルーシブな社会創出」を組織の活動を支えるビジョンとして打ち出している。さらに、今回の東京2020大会が、大会の基本コンセプトのひとつとして、「多様性と調和」を掲げていたことは記憶に新しい。

一方で、組織委会長だった森喜朗氏による「女性蔑視」発言の例を待たず、オリンピック・パラリンピックの「現実」はそれらが追い求める「理念」とはほど遠いとの指摘もある。実際、東京2020大会でもSNS上でのアスリートに対する誹謗中傷がかつてないほど巻き起こり、トランスジェンダーのアスリートの出場に対して否定的な意見もみられた。また、義足のアスリート、マルクス・レーム選手が望んでいたオリンピック出場は叶わなかった。そもそも、オリンピック・パラリンピックから「排除」されている人々も存在するし、スポーツ界の「外」に目を向けても多様性を尊重する社会や共生社会が実現されているとは到底言い難い。

とはいえ、東京2020大会をめぐっては、組織委員会主導のもと、「ダイバーシティ&インクルージョン」を実現することを目指した様々な活動(「アクション」)が展開されたのも事実である。また、パラリンピックは試合中継時間の長さもさることながら、関連番組や特集記事など各メディアにおいて数多く取り上げられた。加えて、日本全国では、「ホストタウン」や「共生社会ホストタウン」となった自治体において、異文化理解や「心のバリアフリー」を目指す取り組みが進められた。

こうした活動や報道、取り組みを支えた人々は、オリンピック・パラリンピックが追求する「理念」と突きつけられる「現実」の間で、どのように東京2020大会と向きあってきたのだろうか。本シンポジウムでは、そうした方々にその「経験」や「葛藤」を共有していただきながら、イデオロギー批判に留まらない、オリンピック・パラリンピックのスポーツ社会学的研究の方向性を模索してみたい。

シンポジスト:

野口亜弥(プライドハウス東京理事/アスリート発信チームリーダー)

山田 潔(日本放送協会放送文化研究所研究主幹)

髙木知幸(平塚市企画政策部オリンピック・パラリンピック推進課主査)

指定討論者:西山哲郎(関西大学)

司会:高峰 修(明治大学)