研究委員会企画シンポジウム

「性の多様性をめぐるスポーツと権力」

趣旨:
 性の多様な在り方が受容されつつある現代世界において、あくまで男/女という性のあり方に固執し続ける分野、それがスポーツである。スポーツは歴史的にmasculinityと関係してきたが、今やそれ自体が資本主義的遺物のように捉えられつつあり、時代はそこからの解放を模索している。また、スポーツと競争は切り離せないものだが、競争に必要とされる公平性は、マイノリティの自由と権利が広く認められるにしたがい、現代では単純には構築できなくなっている。人間の身体を男女という二つの性によって分けることに医学的理由を見出すことは困難であり、性はレインボーで象徴される時代である。スポーツがなお男女二元論の性制度に今後も固執し続けることができるとは、到底考えられない。陸上南アフリカ代表のセメンヤ選手を例に挙げるまでもなく、すでに現実のほうがスポーツの制度より先に進んでしまっているようだ。
 さて、差別に反対し、多様性と調和を理念に掲げるオリンピックの未来、スポーツの未来とは、どのようなものだろうか。スポーツは新時代にたいして何かを応えていけるのだろうか。
 もちろんその回答は簡単ではない。現代のスポーツ、ないし、生きられた身体の現場で、アスリートたちは伝統的な性制度を前に、どのような戸惑いと痛みを経験しているのだろうか。それを私たちは、どのような身体的表象によって理解しているのだろうか。スポーツのなかに新しい制度への可能性は育っているのだろうか。社会学は、まず目の前に起こっている一つ一つの事象に目を向けるところから始め、これらの問いに向き合わなければならないだろう。このシンポジウムは、スポーツ社会学が、制度と身体が対峙する生々しい現場を、どのような言語で語れるのかを考えるものである。

 

シンポジスト:井谷聡子(関西大学)
          小林美香(写真研究家)
          岡田桂(立命館大学)
指定討論者:  稲葉佳奈子(成蹊大学)
                  鈴木楓太(京都先端科学大学)
司会:中江桂子(明治大学) (敬称略)